曾根+田中

今、渋谷でロマンポルノ特集が再び行われている。僕は、急遽グループ展参加が決まり、一分一秒も惜しんで作品制作に取り掛からなければならないはずなのだが、ロマンポルノといったら見逃すわけにはいかなく、いそいそ渋谷に見に出かけてしまうのであった。曾根中生の「新宿乱れ街 いくまで待って」、田中登の「人妻集団暴行致死事件」を見る。もちろん字幕なしでの邦画だが、心の奥まで至福感を味わうことができ、2本とも素晴らしい映画体験であった。これだから、ロマンポルノはやめられない。もちろん、下半身の欲情にも駈られて、である。なんというか、出演者はこれでもかというほど、生き生きとしている。ハミダシ者たちの社会からの疎外感、劣等感や社会に対する苛立ちが主として描かれているのだが、それらのルサンチマンが、そのまま性交に直接結びつき、動物でもある人間の本能のゆくままに次々と繰り返される。社会が決めたルールや道義に反抗、あるいは、無頓着に快楽だけのみを求める。しかし、性交の間だけにそれが通じるのであり、それが終われば、社会の厳しい現実や社会のなかで生きる上での倫理性が突きつけられる。「新宿乱れ街 いくまで待って」は恋人同士が別れた直後に居酒屋で再び出会い、お互いにドンチャ騒ぎをする、そのあっけらかんさには、目を見張るものがある。「人妻集団暴行致死事件」では、集団レイプ殺人の判決、出所後に、被告人の幸せそうなカップル風景が映る。その場面のなんともいえないやるせなさ。むごい事をしても人間は時間がたてば忘れてしまう、その非情さは誰でもが心の奥低にもっているものだと思う。ロマンポルノを見ていると、人間とは理性やら感性やらに流されるままに矛盾に生きざるをえない不思議な生物なのだと思わずにはいられない。ロマンポルノは社会が見ようとしない部分を代わりに性交シーンのサービス付きで我々に見せてくれる。