2019-01-01から1年間の記事一覧

女と男と女、と少年

『パリの恋人たち』を鑑賞する。東京国際映画祭(ワールド・フォーカス部門)にて上映された時の邦題タイトルは『ある誠実な男』だったらしいが、小っ恥ずかしいタイトルになっているのは、「パリ」と「恋人」の文字を組み合わせれば、ある一定の観客数を見…

松本竣介 − 街歩きの時間 –

国道122号線を通り、交差点を右折して渡良瀬川に架かる錦桜橋に向かう時、急峻な山々に囲まれた桐生市の街全体がパノラマ風景のごとくフロントガラス越しに出現する。桐生市特有の風光明媚な地形は何回来ても素晴らしい。山の麓にある桐生市の大川美術館では…

続々・「表現の不自由展・その後」

あいちトリエンナーレ2019は閉幕一週間前にテロ予告や脅迫によって中止に追い込まれた「表現の不自由展・その後」展の再開に辛うじてこぎつけた。再開初日の10月8日は午後2回の入れ替え各30名の定員を設定し、再開以降は抽選によって入場を制限したほかに、…

続・「表現の不自由展・その後」

萩生田光一の文部科学相就任によって、《表現の不自由》は完成された。「あいちトリエンナーレ2019」への補助金(7800万円)を交付しないことを決定したからだ。「ガソリン缶を持って行く」の脅迫・テロ予告ファックスから河村たかし名古屋市長視察による《…

「表現の不自由展・その後」

あいちトリエンナーレ2019の企画展「表現と不自由展・その後」は政治的圧力や脅迫によって中止に追い込まれた。慰安婦をモデルにした『平和の少女像』の作品が最大のターゲットになったのは周知のとおりである。この企画はタイトルからもわかるように、2015…

ジュリアン・オピー

東京オペラシティアートギャラリーで「ジュリアン・オピー」展を観る。僕が美大生だった頃は、YBA(ヤング・ブリティッシュ・アーティスツ)の登場が世界中の美術界の話題を席捲していた。60年代生まれのダミアン・ハーストやダグラス・ゴードンらの(当時の…

『雪夫人絵図』

映画を観に映画館へ行くタイミングがなかなか取れない代わりというわけではないが、本棚の中に長らく埋もれていた未見のDVD、しかも世界のミゾグチ、溝口健二の「雪夫人絵図」(1950年)というインパクトで、観るのなら今しかないでしょ!のモードに入り、や…

『不良少女モニカ』

北欧が生んだ世界的巨匠、イングマール・べルイマン監督の1952年作品。89歳で亡くなったベイルマンは遺作にして最大の野心作である「サラバンド」を85歳で撮ったのだが、驚異的な頭脳、肉体をもった監督としか言いようが無い(70歳を過ぎてから1年に1作のペ…

『グッドナイト&グッドライク』

『グッドナイト&グッドライク』を観る。『オーシャンズ』シリーズ主演のジョージ・クルーニーは今まで僕にとっては、セレブ界のお気楽プレイボーイというイメージしか持てないでいたのだが、彼が自宅を抵当に入れて製作費を捻出し、この映画を撮った監督であ…

語る者たち

ろう者であるアン•マリー監督は、“私たちの仲間”と呼ぶろう者のHIV感染者とその周辺のろう者のもとへカメラを持って会いに行く。ろう者はカメラの前でエイズと自分自身のかかわりを淡々と語る。ある者は健康だった頃はダンスに熱中していたと語り、別の者は…

『河内山宗俊』

28歳で戦病死した山中貞雄はわずか5年間の監督生活で、発表された作品は全26本とけっこうな多作である。しかし、そのうちまとまった作品として現存しているのは、『丹下左膳余話 百万両の壺』、『人情紙風船』、『河内山宗俊』のたった3作品しかない。その…

絵と、/ 千葉正也

ビルの地下にあるgallery aMの縦に奥行きのある空間には、いくつかの四角柱が両壁に沿うようにして並立している。入り口から奥に向かってのスペースでは、その四角柱によってかろうじて2つの空間に分けられる感じだ。それぞれの空間に設営された厚いベニヤ…