2007-01-01から1年間の記事一覧

「エスケープ・フロム L.A.」

ついに、ジョン・カーペンター監督の「エスケープ・フロム L.A.」をスクリーンで観ることができた。この日が来るまで本当に長かった、としみじみと感慨に浸る。巷であちこち言われているように、カーペンターの生き方、アメリカあるいは全世界に対する彼の態…

映画における黒人とろう者

渋谷の夜、ラブホテル街のなかで、映画「コフィー」を観る。ヘロイン中毒で廃人となった妹の仇討ちに執念を燃やす、とびっきりカッコいいコフィーを演じるバム・グリアが初主演した70年代黒人観客対象・黒人俳優主演・低予算製作の<ブラックスプロイテー…

クサナギシンペイ

昼過ぎに日本橋で用をすませた後、雨と風がひどくなったので真っ先家に帰ろうかと思ったが、クサナギシンペイの展示が今日までというのを思い出し、迷わず新川へ直行する。会場のギャラリーソラは初めてだったが、永代通りから右折したところでそれらしき建…

「デス・プルーフ」

久々に「これぞ!活劇!」と思わせる映画だった。映画について思いをめぐらしたり、あれこれ言ってみたりするが、結局のところ「映画とは、活劇である。」と大きな声で叫びたくなる。映画を創るには、倫理性の問題を厳格に扱うか、もしくは、正しいモラルな…

「散歩と部屋」

先日文房堂ギャラリーにて、井上実・天本健一展を観る。ある文献によると井上の作品のモチーフは散歩中に出会ったものであり、天本の作品は部屋の中で静物を構成し、それを画に描くというやり方になっているそうだ。だから、「散歩と部屋」という展覧会タイ…

「崩壊感覚」

東京国立近代美術館の常設展示をぐるりと回り終えたところのスペースで「崩壊感覚」展を観る。当美術館のコレクションを中心に展示され、こぢんまりとした、だが濃い内容が充満していた。なかでも、池田遥邨の関東大震災スケッチ群にはとても深い興味を持っ…

「ブラック・スネーク・モーン」

残り3ヶ月あるが、早合点して今年ナンバーワンの映画に決定することの誘惑に駆られる、その映画の名は「ブラック・スネーク・モーン」。(現在、渋谷シネ・アミューズで上映中なので、必見!)鎖で繋がれたセックス依存症の女を監禁という形を借りて至上の…

「インランド・エンパイア」

デヴィッド・リンチの「インランド・エンパイア」を観る。 3時間の映画なのだが、ストーリー性はほとんどなく、主人公と周りの者たちが相互に絡み合いながら、現実と虚構、内側と外側、日常と非日常、昼と夜といった2つの境界の無効化が極端までにエスカレ…

「H story」

アラン・レネの「ヒロシマ・モナムール(二十四時間の情事)」のリメイクであるこの映画は、即興演技のスタイルを採っている。ベアトリス・ダルの演技を見ていると、どこからどこまでフィクションなのかあるいはノンフィクションなのか、よくわからなくなっ…

ろう者が映画を観るということ

先日の映画館内の出来事なのだが、上映中突然音が消え、約5分間無音のまま画面が延々と流されていた。館内がざわつきはじめ観客の何人かが席を立ち、いつまでたっても気づかないスタッフに知らせに行ったらしく、しばらくした後、元の音状態に戻った。(そ…

「麦の穂をゆらす風」

イギリス支配の中、アイルランド独立運動に身を捧げた人々を描いた映画であるが、国のために戦うということが、今の時代を生きる僕にとっては、あまりにも遠い時代の出来事のように感じてならなかった。だが、この映画は愛国的行為や忠誠心ということよりも…

「ラッキー・ユー」

この映画の監督であるカーティス・ハンソンは、CGバーチャル優生思想がエスカレートするハリウッドのなかで、映画が持つ基本的というか、オードソックスな造りがもたらす優雅さを孤独に生産しているようだ。男と女の出会い、疎遠になっていた父との邂逅、大…

不条理なエロス

藤田敏八の「八月はエロスの匂い」を観る。掛け値無しの傑作。 デパートの売り子である主人公は、勤務中に手に傷を負わせた強盗と偶然再会し衝動心から後を追って、しまいには情交を結んでしまうのだが、その一連の流れに漂う不条理さには、強烈なカウンター…

マルレーネ・デュマス

都心から離れた陸の孤島という感じがしないでもない目的の場所にたどり着くと、やたらと図体がでかいハコモノ建築物が灰色の景色からヌッと現れる。先日観たロマンポルノ映画の残像がまだ脳に焼きついたまま、会場に入ると、「あれっ?俺はまだ続きを見てい…

日活ロマンポルノ

60年代後半から日本映画界は斜陽期に差し掛かり、各映画会社のスタジオシステムが崩壊するなかで、日活は成人映画というジャンルに社運を賭け、日活ロマンポルノという路線でプログラムピクチャーズを辛うじて維持できた。(それもAVが台頭する80年代…

F・カストロとO・ストーン

革命の父フィデル・カストロとハリウッドの怪物オリバー・ストーンのコンビはすごい。車の後部席で体を密着させながらジョークを言い合ったり、並列に置かれた椅子に二人そろってもたれ掛ける光景は、ただの酔っ払いオッサンの絡み合いにしかみえない。(0…

サイレント映画

久しぶりにサイレント映画を見る。 今日の映画は、トーキー以後画面に音が付着してから、映像と音声が一心同体のようにワンセットになっている。どちらかが欠けていれば映画として成立しなくなり、観客からはそっぽを向かれてしまう。それだけ、今日の映画に…

「バベル」

モロッコ、メキシコ&アメリカ、日本の風景がタイムラグに編集されていく。 3つの物語は一見全然無関係のように見えて、実は全てが運命とはいわず悪魔の赤い糸が繋がっており、絶望の淵まで下降線を辿っていく。世界規模のスケール感がそれぞれの「個」であ…