2011-01-01から1年間の記事一覧

映像のなかの映像

今年も残りわずかになったが、大震災と手話指導を始めた影響で例年より映画の鑑賞数が激減した。その限られた映画体験のなかで僕にとっての最大出来事は、マルコ・ベロッキオの発見であった。年末の「夜よ、こんにちは」と「愛の勝利を」の連続鑑賞は他にも…

子供は運動を通じて成長する

相米慎二の映画が日本語字幕付で見られるのは、半ば奇跡に近いようなものだ。先日、東京フィルメックス映画祭のバリアフリー事業の一環として「夏の庭 The Friends 」の日本語字幕付上映があったので、銀座の東劇へ期待をもって行ってきた。その結果、もちろ…

「感動」に感動する

今、一冊の写真集を手にしている。ろう者の写真家、斉藤陽道さんの初写真集、タイトルは「感動」。すごいタイトルだ。一歩踏み外せば、うさん臭く偽善的な言葉にも捉えてしまいかねないが、僕は文字通りマジ感動してしまった。被写体に対する斉藤の眼差しが…

レオ&写楽

2人のろう者の演出による2つの演劇の対照的な世界。 パリ在住トルコ人ろう者のレヴェント・ベシュカルデシュ演出「レオ&レオ」は音声はもちろん音楽、音響も使わない、ほぼ無音の状態であった。もう一方は、日本ろう者劇団員の数見陽子演出「迷宮の写楽。…

「トスカーナの贋作」

未だに夜9時の鐘の意味がわからない。音による想起なのだろうか。それにしてもイタリアの夜は明るすぎるため、日本人の僕にとっては時間感覚を整理できないままに終映をむかえてしまう。ラストの雰囲気からすると、どうやらこの中年の男性と女性は本当に結…

「エッセンシャル・キリング」

この映画の登場人物は最初から最後まで逃げることしか映されていなく(回想シーンはあるけど)、しまいには一言も言わずに画面から消えていく。消えたあとには首筋に赤い模様を着色された一頭の白馬が大自然を背景に優雅にさまよっている。瀕死状態の逃亡者…

「スリ(1959)」

刑務所の面会室で鉄格子ごしに愛撫しあう男女の姿は、絶望さゆえに美しい。人生を半ばあきらめかけている青年と家の中での子育てと隣人の家族である青年に恋心を抱く以外のことはまるで無関心であるかのようなやや単純な美しい女性の恋愛への行方は驚くほど…

パウル・クレー/おわらないアトリエ

入口の部屋には自画像作品が何点か展示されている。制作年は1919年であり、クレーが40歳のときである。僕も来年40歳になってしまう。自分を変えたいと思うばかりで空虚な生活のなかで空回りし続ける僕の眼前で、自画像のなかのクレーは己を淡々と見つめてい…

「ロンリーバタフライ」

ろう者の書いた小説を読んだのは、今までにはなく初めての経験だ。というか、ろう者が小説を出したのは日本では初めてのことではないか?この小説の著者は、女優またはタレントを本職にもつ岡田絵里香。彼女が映画「バベル」に出ていた頃から様々なメディア…

シュルレアリスム展

所用の前にシュルレアリスム展へ行ってきた。平日の昼中にもかかわらず混雑していた。ゴッホ展の時もそうだったけど、日本人は本当に美術が好きな国民性なのだろうかと未だに真相がつかめずにいる。過去の絵画展と現在進行形の現代美術系の展示との入場混雑…

都知事選と斉藤和義

今日は都知事選挙の投票日だ。もう結果は見えているような気がする。これほど注目が集まらない、超低関心な都知事選は今までにはないんじゃないか?それでも僕は自転車に乗って近くの小学校へ投票しに行く。大震災後の普段の生活をまだ取り戻していない時期…

2つの津波映像

東北関東大震災発生から2週間を過ぎた現在、被災地は依然として厳しい状況のままだ。東京では余震の回数が徐々に減ってきてはいるものの、放射能による目にみえない恐怖や「無」が付く計画停電などに振り回されていて、落ち着かない日々が続いている。地震発…

「運命のつくりかた」

10年後のセックスはとても感動的だ。大自然のなかで突如の再会を果たし、マリリンは暗闇のなかの娘から「ママ」と呼ばれ、ボリスは2階で昔の自分に戻るかのようにヒゲを全部剃る。ボリスの恋人(セフレ?)がいるなかですべてが運命ではない運命に導かれてい…

中平卓馬とホームレス

晴天の下にある草木、看板、オブジェ、動物、風景などの約50〜80点のカラー写真が縦の長方形をとって、ランダムな感じで横長の二列に構成されているなか、唐突にホームレスらしき人物を撮ったプリントが出現する。唐突な感じであるのは、識別が出来ない…