2012-01-01から1年間の記事一覧

「殺人幻想曲」(ネタばれあり)

冒頭の空港シーンで周りをよそに熱い抱擁と接吻をする英国人指揮者と美しい若妻。ラストもホテルの一室で熱い抱擁と接吻がクローズアップされ、そのうえにエンドタイトルが被さりこの映画は閉じる。同一人物の2つの同じシチュエーションに挟まれたこの映画…

アナーキスト 大杉栄

衆議院選挙で政局が慌ただしく目まぐるしくなってきているが、新党ラッシュにはうさん臭さと白けが入り交じる。1人しか当選しない小選挙区制度(比例もあるけど)なのに、雨後の筍のように次から次へと新しい政党が誕生し、あげくは合流してしまうへんてこ…

春風沈酔の夜

新宿で「スプリング・フィーバー」を観る。中国映画第六世代の代表格であるロウ・イエ監督の中国ではまだタブーとされている同性愛を描いた映画であり、中国国内では公式上映を禁じられている。広大な中国社会のなかの微小であり特殊にすぎない人間ドラマで…

個展会場風景

「佐藤譲二展」 2012.9.5−23 遊工房アートスペース

サイレント映画であってサイレント映画ではない

最新の映像技術がたえず更新されていく現在のなか、白黒のサイレント映画を撮る意味は何だろうか。2011年製作のサイレント映画「アーティスト」はサイレントからトーキーへ移行する激動期のある男優とある女優のメロドラマを描いている。この映画では、サイ…

個展のお知らせ

この度、絵画個展を開催致しますので、ここにお知らせいたします。 展覧会名:佐藤譲二個展 会期:2012年9月5日(水)ー9月23日(日) トークショー:9月8日(土)17時半ー18時 ろう写真家斎藤陽道氏と対談します。 開廊時間:12時ー19時…

「お引越し」

「おめでとうございます、おめでとうございます…」 早朝の琵琶湖の浅瀬で、主人公レンコが連呼(ん?名前と同じだ…)するこの謎めいたモノローグは、この映画のなかで唯一僕が読み取れた台詞だ。いつも通りに僕は日本映画を台詞やナレーションの内容をわから…

「灼熱の肌」

「あなたに共感するわ。何故なら私も女だから。」 ポールの恋人であるエリザベート(猫背が可愛らしい)は禁断の逢瀬を告白するアンジェラにこう言う。アンジェラ(1964年生まれ!)から袖にされ失意のどん底にくれるフレデリックのそばに寄り添うポールの行…

「ミッドナイト・イン・パリ」

パリの幻惑的な夜の帳のむこうからゴールデンエイジの超偉大な芸術家が次から次へと出現してくるアメージングなキャストショーには映画をまともに見ていられなくなるほど、マニアックな好奇心をそそられる。ヘミングウェイ、フィッツジェラルド、ピカソ、ブ…

「亡霊怪猫屋敷」

この怪談映画の序盤には、深夜の闇に包まれた病院内を誰かが懐中電灯を照らしながら奥に向かっていく場面と、3人の訪問者が廃れた屋敷の門から庭を通り建物内に入っていく場面が出てくるのだが、どちらも引き気味の撮影でスローテンポになっている。この先…

「サウダーヂ」

やっと「サウダーヂ」を観ることができた。この映画はしばらくDVD発売はしないとのこと。その代わりに映画館上映を不定期に延長している様相のようだ。そのおかげで今時になって映画館で観れたわけだが、この「サウダーヂ」は私的空間で身内だけでまったりと…

「珈琲とエンピツ」

ろう者である僕はこのドキュメンタリー映画を純粋に観ることはなかなか難しい。ろう者として観たのか、それともひとりの人間として観たのか、どっちつかずのまま映画館を出る。ろう者とはあらためてとても複雑な存在だとつくづく思う。ろう者という存在は耳…

ジャクソン・ポロック

東京国立近代美術館で「ジャクソン・ポロック展」を観る。ポロックの絵画にはドリッピングという、これまで(1940〜50年以前)の絵画技法にはなかった破壊的行為、あるいは制作プロセスという概念から生じてきた絵画イメージがキャンヴァス上に表現されてい…

ヴェルマ/アメリカ/ヘルマン

ノートパソコンの画面から始まる映画はとても緩慢なリズムを伴って進行していくのだが、自殺をほのめかす車のなかの女性の前でいきなり小型飛行機が湖に突入したあと、現実あるいは過去の一場面に戻されたかのように知覚したはずなのだが、映画が進行するに…