2023-01-01から1年間の記事一覧

《 石川真生 私に何ができるか 》:東京オペラシティアートギャラリー

東京オペラシティアートギャラリーの《石川真生 私に何ができるか》を観る。沖縄出身の石川真生が複雑な歴史や文化を抱え込んだ現代の沖縄を精力的に撮り続けた一連の活動がコンパクトに紹介されている。本展のメインは石川が2014年から取り組んでいる〈大琉…

《 キュビスム展 美の革命 》:国立西洋美術館

満を持して、国立西洋美術館の「キュビスム展 美の革命」を観に行く。ここでも至極当然のように、セザンヌから始まっている。今年の夏に開催されたアーティゾン美術館の「 ABSTRACTION 抽象絵画の覚醒と展開」では、《サント=ヴィクトワール山とシャトー・…

『ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地』 シャンタル・アケルマン

ブリュッセルのアパートの部屋で、美貌を控えめに引き立てる上品さを感じさせる灰色のセーターをその都度に羽織ったり脱いたりする未亡人のジャンヌの姿に、『去年マリエンバートで』でココ・シャネルがデザインした衣装をまとった上流階級の貴婦人のきらび…

『バービー』:グレタ・ガーウィグ

ピンクと人工光に彩られたスタジオセットで繰り広げられるバービーランドと自然光に晒され、雑然としたビーチや街中で人間たちがうろつくリアルワールドの対極にある2つの世界のギャップが、『バービー』においてもっとも脳裏に焼きつけられた映画体験であ…

《風景論以後|After the Landscape Theory》:東京都写真美術館

東京都写真美術館の地下1階で《風景論以後》の展覧会が催されているのだが、展覧会としての「ハレ」というよりかは、何の変哲もない日常的な風景としての「ケ」がひっそりと展示されている印象があり、そういう意味では地下の空間がふさわしいように感じられ…

《 ABSTRACTION 抽象絵画の覚醒と展開 》:アーティゾン美術館

遅まきながら、やっと初めてアーティゾン美術館に入ることができた(前身のブリヂストン美術館の時は2、3回くらい観に行ったと思う)。絵を描く者にとって魅惑的であるはずの展覧会タイトル、《ABSTRACTION 抽象絵画の覚醒と展開》の文字を一度目にした以上…

マティス展:東京都美術館

大規模な回顧展としては約20年ぶりの「マティス展」の鑑賞を目的に、東京都美術館へ勇気をもって行ったのだが(混雑が苦手なので)、東京都美術館に入館するのも約20年ぶりどころが、それ以上ぶりのような気がする。当時何の展覧会を観たんだっけ?と必死に…

《 聴者を演じるということ 序論 》:北千住BUoYギャラリー 【ネタバレが含まれているのでご注意ください】

保険会社の上司と部下とおぼしき男女の2人が(架空の)お客さまを帰らしたあと、テーブルに着席する。テーブル上で繰り広げられる、たわいない会話劇は音声による対話(という形)で行われるのだが、演じている2人はろう者である。《 聴者を演じるということ…

今井俊介 スカートと風景 / 東京オペラシティアートギャラリー

東京オペラシティアートギャラリーにて「今井俊介:スカートと風景」の展示を観る。会場内に設置されているディスプレイのインタビュー映像で、作家本人は絵画とデザインの境界の曖昧さについて語っている。ある時にふと何気なく目にした知人の揺れるスカー…

『彼について』(2018年/イギリス):テッド・エヴァンズ

「私は平安を与えよう 私が与える平安は世の平安とは異なるが、心を冷静であれ」 移動中の列車内でサラが座席に座っているショットに上記の神父の言葉の前半部分が被さり、その言葉の後半部分と同期する神父の説教に傾聴するロバートの父がいる教会の厳かな…

『夢の男』2023年劇場版:KAAT 神奈川芸術劇場

KAAT 神奈川芸術劇場にて『夢の男』を観賞する。『夢の男』は《視覚言語がつくる演劇のことば》プロジェクトの作品として制作されている。藤原佳奈が執筆したテキストをもとにして、過去2年間(2021年/2022年)に同タイトルによるオンラインでの発表が行わ…

『リコリス・ピザ』 ポール・トーマス・アンダーソン

1970年代アメリカのとある一都市で繰り広げられる恋模様を描いた『リコリス・ピザ』には、エンターテインメントの枠に収まりきらない映画の醍醐味をまざまざと見せつけられる。ポール・トーマス・アンダーソンの非凡なセンス光る世界観(このように言ってし…