「クリスマス・ストーリー」

アルノー・デプレシャンの「クリスマス・ストーリー」を観る。フランス映画ではあるが、これは立派なハリウッド映画でもある。複雑な物語構成でありながらも全編にかけて退屈させない創りが、現在のハリウッド映画と寸分も違わない印象を受ける。150分という時間もまるで同じではないか。この映画の俳優たちは絶えず動き回る、動かずにはいられないようであり、それぞれの動作が映画のラストに向かって連鎖的に接続し続けている感じは、先月に観たばかりのジェームス・マンゴールドの「ナイト&デイ」となんら変わりない。ちょっと違う点をあげるとすれば、物語の流れから突飛に外れた非合理的な純粋アクションの多用だろうか。あるいは、最初は因果関係に沿っているのだが、時間が経過するにつれて過剰な動作が付加されていく。物語は複雑に絡み、それぞれのシーンが断片的でありながらも、映画全体を包む本流が強固に形成されていくなかで、意味体系から解放された純粋アクションが唐突に所々に出現する。特にデプレシャンの盟友であるマチュー・アマルリックエマニュエル・ドゥヴォスが演じる、意味不明すれすれな動作は本当に面白すぎる。だが、このような意味不明な動作でも普段の日常生活に目を凝らしてみればよくある動作なのだ。我々が見て見ぬ振りをしているだけである。現世だと変人扱いされてしまいかねないが、デプレシャンの映画を見ると、このような純粋アクションは本当に豊かで魅力ある動作であることがわかる。それにしても、エマニュエル・ドゥヴォスの存在感は、あまりにも圧倒的だ。ぶてぶてしい態度、場違いな身体的反応、得体のしれない含み笑い、怒りを買われそうなはにかみの表情。我が強いと言われるフランス人のなかでも群を抜いており、かえって真の強さを見せつけられているようだ。カトリーヌ・ドヌーヴと2人きりに並んだ時、これほどぴったりな2人はいない。美人ではなく、むしろブスなほう(失礼!)だけど、本当に惚れてしまいそうだ。